自己成長因子を用いた卵巣予備能低下・着床不全に対する治療
自己血小板由来成分濃縮物(PFC-FD)を用いた治療(自費診療)
PFC-FDは、患者さま本人の血液由来の多血小板血漿(platelet-rich plasma,PRP)に含まれる「成長因子」のみを抽出・濃縮し凍結乾燥させたもので、体内の組織修復・損傷部位の血管新生、創傷の治癒などを促す因子の濃縮物です。成長因子を効率的に濃縮・組成し、卵巣内または子宮内へ注入することによって、本来、自分の体が持っている細胞の再生能力を局所的に最大化する治療法です。
1. 卵巣内注入
PFC-FDに含まれる成長因子により、卵巣内環境の改善や卵胞発育を促す効果が期待できることから、卵巣機能の改善がみられると考えられています。
近年、PRPを卵巣内に投与し卵巣予備能(AMH値、FSH値、胞状卵胞数)の改善や採卵個数の増加といった報告が多くなされています1,2)。
参考文献
1) Melo P. et al. J Assite Reprod Genet,2020,37(4):855-863
2) Barrenetxea G. et al. Human Reporod 2024 Apr 3;39(4):760-769.
卵巣内注入の対象
- ・当院にて不妊治療中の女性の患者さま
- ・卵巣予備能低下と判断される患者さま
- ・胚発生不良と判断される患者さま
- ・感染症検査(HIV、HBV、HCV、梅毒、HTLV-1)で陰性の患者さま
※対象基準は、上記以外にもこれまでの診療情報をもとに担当医師が判断します。
2. 子宮内注入
PFC-FDに含まれる成長因子により、子宮内膜の組織修復が促進されて、子宮内膜が厚くなることや子宮内膜環境改善が促されることで受精卵が着床しやすくなると考えられています3,4)。
参考文献
3) Li M et al. J Clin Med 2022 Nov 15;11(22):6753.
4) Tang R et al. Front Endocrinol 2023 Jul 6:14:1183209.
子宮内注入の対象
- ・当院にて不妊治療中で移植を予定している女性の患者さま
- ・子宮内膜が厚くならない患者さま
- ・反復して治療不成功の患者さま
- ・感染症検査(HIV、HBV、HCV、梅毒、HTLV-1)で陰性の患者さま
※対象基準は、上記以外にもこれまでの診療情報をもとに担当医師が判断します。
方法
採血~PFC-FD作製
患者さまの前腕から静脈血を50ml採取します。
PFC-FDは、提携しているセルソース再生医療センター(特定細胞加工物製造許可施設、厚生労働省認可)に、採血した血液を搬送し作製します。血小板由来因子のみを抽出濃縮してフリーズドライ化した状態で返送され、当院で使用します。
作製には最低3週間ほどかかります。
1. 卵巣内注入
PFC-FDの卵巣内への注入は、排卵期から翌月経10日程度の時期に投与します。
(1回の注入につきPFC-FDを2本使用します)
2. 子宮内注入
PFC-FDの子宮内への注入は1周期・原則2回投与となります。
月経10日目頃と12日目頃を目安に2回に分けて子宮内に注入します。
(1回の注入につきPFC-FDを1本使用します)
PFC-FD療法のメリット
- ・PFC-FDは予め作製し室温長期保存(保存期間6ヶ月)できるので、治療スケジュールに柔軟に対応できます。
- ・注入日の診察も短時間で終了します。
※注意点
採血を行ってから、PFC-FDを作製するには3週間ほどかかりますので、治療を希望される場合には、計画的に進める必要があります。
リスクについて
- ①PFC-FD作成の為には、静脈内に注射針を刺し採血が必要となるため、採血部位に一時的な痛みや腫れ、皮下出血や稀にしびれを伴うことがありますが、通常は数日程度で改善します。
- ②PFC-FDをカテーテルを用いて子宮内に注入する際に、腟や子宮内の擦過傷を伴う可能性がありますが、通常は数日程度で改善します。また、細菌感染による子宮内膜炎や腹膜炎のリスクもあるため、膣内の消毒と抗生剤の投与を行います。
- ③PFC-FDを卵巣注入する場合、経腟的に卵巣に細い針を刺してPFC-FDを注入します。採卵時と同様に出血や感染のリスクがあるため、腟内を消毒し細い注入針で卵巣を穿刺し、抗生物質の投与を行います。
本治療は自己血液を用いた治療法である為、アレルギー反応などの重篤な副作用は極めて少ないと考えられています。
料金
- ・PFC-FD作製費用 15万円(消費税別)
- ・1. 卵巣注入(両側卵巣) 10万円(消費税別)
※PFC-FD注入を片側卵巣にした場合も料金は変わりません。 - ・2. 子宮内注入 2万円(消費税別)
※PFC-FD注入を1回にした場合も料金は変わりません。
- ※感染症検査にて精密検査が必要となった場合は、5,000円程度の検査費用が追加となります。
- ※料金は予告なく変更となる可能性があります。
医薬品承認および安全性に関する情報
- ・医薬品の承認状況
本治療に用いるPFC-FDは医薬品医療機器等法上、未承認医薬品です。 - ・入手経路
本治療に用いるPFC-FDはセルソース株式会社が製造・販売を行ったものです。 - ・国内の承認医薬品等の有無
本治療に用いるPFC-FDと同一の性能を有する他の国内承認医薬品はございません。 - ・諸外国における安全性等に係る情報
諸外国においても承認されていないため重大なリスクが明らかになっていない可能性があります。 - ・医薬品副作用被害救済制度について
万が一重篤な副作用が出た場合は、国の医薬品副作用被害救済制度の対象外となります。
その他留意点
- ・採血から加工に最低3週間ほど要します。使用期限は6ヶ月です。
- ・作製したPFC-FDは患者さまご自身で保管いただきます。
- ・血液の状態によってはごくまれに作製できない場合があります。
その際には再度採血をお願いする場合があります。 - ・PFC-FD投与に対する反応は個人差があります。